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映画。『マトリックス』(1999年)

 かつて一世を風靡した話題作。ストーリーはなきに等しいが、舞台設定や画面の視覚効果など、ある種まんが的な映像表現が愉しい。アクションシーンが全てだが、本作はいろいろな作品との接点も愉しめる。

【コンピュータとディストピア】
 オタク気質の人は暗示に弱い。暗示とは「語られないはしないが、意味を提示した何か」である。オタクはそれを語るのが大好きなのである。
 そして、扱われているのがコンピュータ世界である以上、世の中の男子を虜にするには十分であろう。

 ところで、この作品は10年前に一世を風靡した作品であるが、allcinemaでの感想を読んでみると酷評が多い。みんなのレビューを見るとめちゃくちゃな数のレビューがあって見切れないが、allcinemaと同数のレビューを確認してみると酷評はあまりない。
 サイトによる違いはよく分からない。しかしallcinemaのレビューで思うのは、映画通ぶろうとしてわざわざ酷評しようとしているのではないか? と思われる書き込みが散見されることである。
 そして、みんなのレビューのほうは絶賛する人間ばかりが集まっている感じがするのである。

 コンピュータ世界らしく、分析でもしてみよう。ヒマだな俺も。

 allcinemaにあがっている、9/10までの64件中62件(うち2件重複投稿)のレビューから、何について語っているかをいくつかの分類に分けてその量をはかってみた。なお、のべの量なので、一つのレビューで複数の項目に言及している場合がある。また、同じカテゴリで矛盾したことを言っている場合や、表現の大きさが違っている場合、ニュアンスをくみ取って配分しているため、ここには誤差があり得る。そもそも調査するには数量が少ないが、ご了承いただきたい。

 レビューは「ストーリー」「アクション」「映画として」「衣裳」「映像」「世界観」「脚本」「俳優」という分類におさまり、映画と全く関係ないことを書いているレビューといいがたい6件をのぞいて語数を数えてみた。
・映画として:73件
・ストーリー:39件
・映像:26件
・アクション:15件
・俳優:12件
・世界観:8件
・衣裳:1件
・脚本:1件

◆映画としてどうか…73件
 映画としてどうだったかはレビューサイトだけに最も多い。面白いかどうかが重要であるし、当然ともいえる。
 面白かった、好きという肯定的意見が49件。
 途中で飽きた、面白くない、受け付けないという否定的意見が24件。
 肯定的意見の中でも何度も見た、最高という手放しの意見が8件。
 否定的意見の中でも途中で見るのをやめた、退屈、駄作などの最悪の評価も8件。

 全体の中で面白かったと言う意見が約49%。
 否定的意見の中での最悪の評価は33%。

◆ストーリー:39件
 次にくるのがストーリーで、関心度の高さというより娯楽作品はストーリーがどうかをやはり見るであろうし、これもまた当然だと思う。
 39件中、「紙のように薄い」との言葉に代表されるように、シンプルすぎてつまらないと言う意見が15件あり、ストーリーラインがシンプルであるからわかりやすくて「良い」という評価はない。
 その一方「奥が深い」「複雑」という意見が10件あり、肯定的な奥の深さで3件、「意味不明」という否定的な意見で7件。
「感動」「しっかり考えられている」などの評価も10件ある。
 肯定的意見は13件、否定的意見は26件である。

◆映像26件
 映像に関する意見は肯定的意見が22件、否定的意見が4件。
 否定的意見はいずれも公開当時の意見ではなく、2001-2004年。CSでみたと状況が書かれているのが1件。
 CGを含めた本作の映像表現が後代の作品に著しい影響を与えたことから見ると、これらの否定的意見をそのまま本作の評価として受け止めていいかどうかは検討が必要である。
 肯定的意見の中でも斬新、画期的、革命といった、いままでの映画の中でも映像表現の刷新に成功した作品としての評価が5件ある。

 2004年のレビューで「ことさら騒ぐほどでもない」というのがあったのにはちょっと笑った。いかに99年からの5年間ではびこったかがよく分かる意見だ。
 この映像と言う言葉には、撮影手法、CG、できあがった映像そのものと、一口に映像といってもいろいろなニュアンスがある。

 CGは正直くどいほどなのだが、これが持ち味として笑って許せればいいと思う。ワイヤーアクションと組み合わせた派手な映像手法が見どころなのは確か。

 さてCGは置いとくとして、とくに、中心でネオとエージェント・スミスが組み合う中、外からぐるりと一周して見せる映像手法――「マシンガン撮影」「バレットタイム」などという――を初めて見たときは実に衝撃的だった。時間を止めてぐるっとカメラアングルだけ一周するので、何度か見るとまるで品評会かなんかのように見えてしまうけれども。

 惜しいのは、こうした手法が撮影から独り立ちしてCGワークスになってしまっていることかも知れない。
 実写で撮影した映像を見た我々には「どうやって撮影してるの??」という知的興奮があった。しかしCGではいくらがんばってもCGだからなんでもできるとなかばあきらめの気持ちで見られてしまい、知的興奮がないのである。

 少なくとも俺は、CGを効果的に使っていることが見られるかどうかに関心があり、CGだからすごいと感じることは全くない。

◆アクション:15件
 肯定的意見が12件、否定的意見は3件である。
 否定的意見の中で拳法をつかっているのがきちんとしてないとか様にならないと書かれていて、アクションシーンのなかでも素手で戦うときのシーンについての指摘である。本作はいわゆるカンフーアクションだけでなく、ガンアクションもあるため、全体への否定的な意見という意味では、0件といってよいであろう。

 俺が初めて見たとき、見え見えのワイヤーアクションジャンプはダメだこりゃと思ったし、カンフーはジャッキー・チェンの初期作品のような「タイミングを見て殴る」というあのリズムが見えないという進歩がやや感じられるだけで、体術としてふにゃふにゃな切れのなさである。派手だが個々の部品があまり良くないという印象。特に蹴りはへなへなだった。

◆俳優:12件
 12件中、肯定的意見が10件、否定的意見が2件。否定的意見はキアヌ・リーブスへの評価である。キアヌ・リーブスへの好意的評価は、見たところ女性だけであろう。

 俳優に関しては意見全体からすると少なく、キアヌ・リーブスの「かっこよさ」を上げている人が12件中7件。演技そのものに見るべきものはなかったといってもよい。

◆世界観:8件
 物語の背景やその世界の設定として世界観という表現があるが、これについての言及が8件。
 うち4件が肯定的意見で、3件がパクリ、1件がSFが苦手で理解不能とある。
 世界観が他作品の模倣であるという意見が3件あり、そのうち2件は「攻殻機動隊」をあげている。
 SFが苦手で理解不能という意見は、そもそもなぜ見たのか謎であるし、本作の否定的意見としては取り上げない方が良いかも知れない。
「攻殻機動隊」も本作も、影響を受けている作品は同じなので、似ていて当然であろう。パクリと言えばパクリだが攻殻をことさら上げる必要はないとも思う。

 士郎正宗の「攻殻機動隊」では、「コンピュータネットワーク上に人格が「生まれた」らどうなるか」を根底に据えて「生命とはどう違うのか」「生命とは何か」を考え「つまるところ肉体なんぞ人格の入れ物に過ぎない」といっている。
 それに対して本作はそういう問いかけより、よりわかりやすく「コンピュータに支配されたディストピアで、肉体を持つ人間として自らを自覚し、生きるために戦うこと」が主眼となっており、支配被支配の構図がより強調されている。

◆衣裳:1件
 ファッションについてほとんど言及がなかったが、それぞれの俳優に合わせたサングラスのデザインはかなりよかったとおもう。どう見てもトリニティのスタイルが一番力が入っていたような。

◆脚本:1件
 斬新とは言い難いという意見で1件ある。ストーリー展開やアクション、映像表現といった個々の見どころに意識がいって、全体的な部分でどうかという意見がほぼ見られないのは面白い。

 おそらく本作の映像技術と見せ方、カンフー、ストーリーラインなど、脚本中の「ある一面」に意見が集中するせいで、全体=脚本がどうということは二の次になっている可能性が高い。
 レーダーグラフで言えば、映像表現とアクションに突出が見られるが、ストーリーラインが極端にへこんでおり、他も全部へこんでいるといったような、かなりいびつかつ面積の狭いレーダーになっているといえるかも知れない。
 つまり脚本そのものについて語りにくい作品ではないかと思われる。

◆どれにも言及してない:6件

【前評判】
 前評判の大きさと、予告が流れすぎていたせいで本編にインパクトを感じなかったというレビュアーが散見された。これは重要な指摘である。
 前評判はともかく、今の映画の予告編は、ダイジェスト化している。見たいという期待を高めるのではなく、見せ場となるシーンをいろいろとつなぎ合わせて「こんなに見どころのある話だよ」と説明する映像になっているので、いわばあらすじを見ているのと同じである。
 これでは本編を見たときの感動が薄れてしまう。この点どうにかならんもんか…。

【感想のようなもの】
 時間がたてたつほど、本作の話は書きにくくなる気がしてしょうがない。
 トリニティがネオを愛したのは唐突すぎて良くワカラン。
 アクションシーンでカッコいい演出があるのはよいが、何よりカッコいいと思ったのがワーナーブロスの緑色のロゴというあたり、なかなか侮れない。
 バーチャファイターっぽいが、やはり仮想世界と言うことでわりと独創的な振り付けがよい。ただしやはり肉弾戦のアクションは見てられない。

 本作を純粋に映画として見た場合、視覚効果をのぞくと見るべきものが何もないというとんでもないことになっている。重点は画面そのものであろう…。

 見れば見たで「あの話題作かー」という懐かしさがこみあげるだろうし、漫画的な視覚効果、画面造りが見たい人にはおすすめかもしれん。

――――――――――――

 さて、次回はとうとう俺の映画鑑賞月間、最後の作品。イメージファイルを残してあるのに見てない作品がけっこうあるが、それはいずれ見たらまた感想を書こうと思う。
 毎日アップするというのは意図したことではなかった。感想を書いていったら貯まったので、一日一回アップしないといつまで経ってもなくならんなぁと思ったからである。映画鑑賞は不得意だったが、割とまともに鑑賞できたので自分で驚いている。
 見に行きたい映画はまだあるし、生活に組み込むことには成功したかも知れない。

映画。『天空の城ラピュタ』(1986年)PageTop映画。『立喰師列伝』(2006年)

Comment

継続は力

かなり驚きの数ヶ月でした(笑)

しばらくしたら、のんびりとミュージカルでもみてください。

自分でも驚き

 どもども。

 ミュージカル…は、苦手でござる。
 ストレートプレイならみまつ。

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マトリックス

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